『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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『約束 短編小説 (8) 『四国遍路』 』

『約束 短編小説 (8) 『四国遍路』 』_a0021871_12515949.jpg


 『パパ 前 話した 『四国遍路』のお手伝い しても構わないかしら?』
 『え~~~ズル~~ィ、ママだけ 旅行に行くの?私は~~~?』
 無邪気にチャチャを入れる陽子に
 『アナタが行ったら お手伝いじゃなくて 足手まとい!!
 お遊び気分なんだから。』
 『ハハハ。。。ママの言うとおりだ。『お遍路』の意味も
 分かってないんだろう?』
 『パパまで ひど~~~ィ!じゃあ みっちやんちの別荘に 
 泊りがけで遊びに行くの 許してくれる?』
 (少しづつ こうやって 子供は 親の手から 離れてゆくのね。。。
 そう思いながら)
 『それは パパ に チャンと 説明して 所諾して貰いなさい。』
 『ママ 応援してね♪ パパ 駄目??』
 『分かった 分かった。。。それは 後で チャンと話しを聞くから。
 今は ママの話が 先だろ。』
 『ホントね。チャンと 話し 聞いてね。わ~~~ぁ 楽しみだなぁ~~♪』
 陽子のココロは もう 友人達との小旅行の事で一杯になったように 
 光り輝いていた。



 『で。。。それは いつからって言っていたっけ?
 ここの所 忙しくて ママの話し 上の空だったから。。。
 ごめん ごめん。』
 『明後日から 2泊3日なの。。。。始め パパに迷惑掛けるから 
 お断りしていたんだけど。。。。お手伝いする方に 欠員が出て 
 どうしても。。。。って 御願いされちゃったの。』
 『行かれる方が 年配の方ばかりだから 手伝いをする人間が少ないと 
 大変だろう。
 僕の事は 大丈夫だから お手伝いしておいで。。。。
 陽子も いいだろ。パパも 出来るだけ 早く帰ってくるから 
 一緒に 食事を作ろう。』
 『え~~~パパ。 お料理 出来るの~~~。ファミレスの方が 
 美味しそ~~~う。』
 『ハハハっ。。。。驚くな~~~これでも 学生時代は バイトで 
 コック見習いしてたんだよ。案外 ママより 美味いかもしれないぞ!!』
 『じゃあ 私も 今度 食べさせて頂こうっと。。。。』
 (夫の優しさと陽子の無邪気さに 心の中で そっと手を合わしながらも
 私は 慶子の事で 胸が張り裂けそうだった。
 昨日。。。ドクターから 
 『もう 余り 時間がありませんので 出来るだけ側に
 居てあげて下さい。』。。。。と言われた言葉が 
 私の心と身体を 粉々にしてしまいそうだった。)



 翌日 夫が出勤し 陽子が 学校に出掛けたのを見計らって
 洋服タンスから 『喪服』を出し 風呂敷に包んで 鞄の一番下に
 そっと しまった。。。。
 後は 『バス遍路』なのだから 軽装な洋服を用意すればいい。
 いつの間にか 幾筋もの涙が 私の頬を伝い 哀しみの渦に
 巻き込まれそうになっていた。。。。
 いったい 何時間 そうしていたんだろう。。。。
 10分間だったのかもしれない。。。
 ボンヤリと この 『家・家族・家庭』。。。というものを 見渡していた。
 私が生まれた時には 何一つ 無かったものが ここには ある。。。。
 『平凡』だけれど 確かな 現実の形として
 私は 手に入れたんだ。。。。
 『母親』。。。。一瞬 この言葉が 浮かんだ!



 『行かなくちゃ!!』
 心の声に 突き動かされたように 私は 我に返り
 慶子の元に行く為に。。。。。
 あのなだらかな坂道を 小走りに駆け上がっていた。。。。



    
            。。。。。。 『慶子』が 私を 待っている!!!



             
               『約束 短編小説 (8) 『四国遍路』 』
by deracine_anjo | 2004-08-11 14:13 | 『約束』  短編小説