『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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『耳朶 (9) 短編小説 『真夏の夜の夢』 』 

。。。。数年前と同じだった。

ある日突然に 季節が変わったような気がする位
一段と多忙な日々を送り 考える余裕を持たない様に 何処かで意図的に送る日々。
今日も 熱い一日だった。。。。
(クライアント)との交渉で 何とか 先の目処が立ち
部下と共にビルを一歩 外に出た途端
私は 自分の意識が遠のくのを 感じた。
部下の声と共に 何処かで
『救急車、救急車を誰か 呼んでください!!』
。。。。それが 最後に 聴いた声だった。

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誰かが 私を呼んでいる。。。
夫でもなく 両親や友人、知人でもない。。。。
穏やかな 包み込むような声で私を 誰かが 呼んでいる。。。。


ボンヤリとした意識と視界の中に 徐々に鮮明に映し出されたのは
苦渋と哀しみと 愛情と憐憫に満ちた
夫の姿だった。。。。
『僕が 判る?』
そう言いながら 私を覗き込む彼に 少しづつ焦点を合わせながら
『ここは どこ?私 どうしたの?あぁ。。。ここは病院なのね。。。』
『私 どうしたの。。。。?そう。。。打ち合わせの後。。。。。』


そっと 私の手を握り締めて 彼は
『ああ。。。軽い貧血を起したんだよ。部下の方が 受け止めてくれたから
頭を打ったりしてないし。。。何も 心配は要らないよ。
ただ。。。。』
苦しそうに言葉を 止めてしまった夫の代わりに
『私 妊娠しているんじゃないの?』
『何ヶ月?』
『子供は 大丈夫なの?』
一気に 言葉を吐き出す事で お互いが助かると思った。


『うん。。。もうすぐ 4ヶ月に入るそうだよ。子供は 大丈夫。
元気に育っているって。。。』
そう呟く夫を 私は 幼子を抱きしめる様に
この腕で 抱きしめてあげることが出来なかった哀しみに
一瞬 ココロが 一杯になった。


しかし 私の口から出た言葉は
『御願い。私 家に帰りたいの。ドクターに御願いしてきてくださる?』
『今夜は 一晩 ここにと仰っていたけれど 名医が側に居るんだから
大丈夫だよね。御願いしてくるよ。』
そう 少し冗談を言いながら 出て行く姿をみて


何かが終わり 何かが始まった。。。。


   耳朶を触れている自分に気が付き ふと。。。。

            
         闇に包まれた外の世界に 目を向けた。




               『耳朶 (9) 短編小説 『真夏の夜の夢』 』
by deracine_anjo | 2004-07-28 05:24 | 『耳朶』  短編小説