『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

『耳朶 (6) 短編小説  『街角』。。。』



その日は 予定していた(クライアント)との打ち合わせが 
急遽キャンセルになり
私は 社に戻らず 直帰することにした。
偶には 手料理の一つでも。。。と思い立ち 夫の病院に電話を入れたが
まだ 診療中との事で 伝言だけ頼んで
私は デパートの地下食料品売り場へと 急いだ。
両手に 一抱えの食材を買い込み 外に出でた時には
もう 夜の匂いが し始めていた。

『あっ!!ワインが必要ね!』
1人そう呟き 行きつけの『リカーショップ』に向かい始めた瞬間
私の周りから 一瞬にして 色が失われた。。。唯 一点を残して。。。。


数メートル先を 歩いているカップルは紛れも無く
夫と遼子さん。。。。まるで 仲睦まじい夫婦の様に 寄り添い
語り合い 時に 微笑み合い。。。。


瞬間的に私は踵を返して その場から逃げるように立ち去ったが
その時の記憶は 殆んど何も残っていない。
買い求めた食材も タクシーの中に置き忘れたのだろう。
何一つ 私の手には なかった。
今まで 自分の家だと思っていた家の玄関に立ち
鞄から鍵を出し差し込もうとするが 手が震えて 
上手く開ける事が出来ない。


a0021871_2162540.jpg


その瞬間 微かにドアの向こうから リュウの声が聴こえた。
『私を 必要としている 血の通ったものが待っている。』
。。。そう思った瞬間 震えは止まり 「カチャリ」と鈍い音と共に 
鍵が差し込まれ ゆっくりと ドアを開けた。


『お帰りなさい』。。とでも言うように リュウが足元に擦り寄ってきた瞬間
おもむろに抱き上げ。。。。
私は 声も出せず 唯 止め処も無く流れ落ちる涙を
リュウの身体に 滴り落としていた。。。。。
まるで リュウが 私の哀しみを 吸い取ってくれるかのように

                     いつまでも。。。。



              
                  『耳朶 (6) 短編小説  『街角』。。』
by deracine_anjo | 2004-07-24 13:32 | 『耳朶』  短編小説