『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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『耳朶 (5) 短編小説   『結婚』   』

『耳朶 (5) 短編小説   『結婚』   』_a0021871_218355.jpg


何故 あの時 彼のプロポーズを 『OK』 してしまったのか。。。。
今となっても 私自身 良く判らない。


仕事も 順調過ぎるほどだったし 女性として 『総合管理職』という地位を確保し
徐々にだが 他の男性社員とも
仕事上では スムーズに 働ける環境が 
漸く出来つつあった矢先
彼から 突然 プロポーズを受け
このまま 仕事を理解して 続けさせてくれるという言葉と
『子供』に関しても 『僕達だけで いいじゃないか。。。』と言う言葉に
酔っていた 感は 否定できない。


でも。。。交際を始めてからも 時折 何か知れない不安感を感じていた。
言葉に出して 確かめる事が 怖かったのだ。

しかし。。
それは。。。。新婚旅行のホテルで 漸く 理解できた。


彼は。。。。。『女を愛せない人だった』。。。のだ。
私と 付き合い 結婚する事で 変えられると 彼自身
最後の願いを 私に託したのだが。。。。やはり 無理だったのだ。


端正な顔をした彼が 苦渋に満ちた面持ちで
子供の頃から 今までの事を 始めて 私に話す横顔は 
ある意味で 変な言い方だが 
美しく 壊れそうな 硝子細工の様だった。


彼は
『君の経歴に 傷を付けたくない。。。。
出来れば この紙に サインして欲しい。
出来る限りの事は 一緒に 乗り越えられるよう 僕は 努力するつもりだ。
今以上に 君のよきパートナーとして 君を 守るつもりだ。』

そう言って テーブルの上に 『婚姻届』を 置いた。



一瞬の躊躇もなく 私は 渡された彼愛用の万年筆を受け取り
左手で耳朶に触れながら サイン を した。。。。



         そして   不自然である筈の結婚生活は

         妙に 居心地の良い 結婚生活 に変貌していった。




                     『耳朶  (5)短編小説  『結婚』  』


 
by deracine_anjo | 2004-07-23 22:47 | 『耳朶』  短編小説