『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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宜しければ。。。。お付き合い 下さい。

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    『耳朶』 (その1)


もう。。一時間近くに成るだろうか。
こうして 彼と 気まずい時間を 過ごしているのは。

繰り返される言葉は もう 聞き飽きていた。
心の中で (早く 帰りたいと 思っていた。家で1人待つ リュウ の事が気がかり。。。
お腹を空かせて 待っているだろう。。。)

おもむろに 煙草をもみ消した彼が 口を開いた。

『何度も言うように 僕は 君と別れるつもりはないよ。
君は もう 僕との関係に 飽きたという事なの?』

『黙っていないで ハッキリ言ってくれよ。
なんで 久し振りに こうして 逢えたと言うのに
君が そんなに 押し黙ったままでは 何を考えているのか
僕には 伝わらないよ。』


そう。。。。お互いに 仕事が忙しく 逢ったのは 2ヶ月振り。。。。
彼は ニューヨーク土産まで 持参して
ニコニコした顔で いつもの待ち合わせのこの店に 入ってきたのが
1時間前なのだ。

私は もう冷めて 香りも判らなくなった ミルクティーを
一口 飲み干した後、
メンソールの煙草に火をつけ。。。口を 開いた。

『巧く伝えられないけれど もう 無理だと思うの。』

私は いつもの癖で ピアスを確かめるように 耳朶に触れながら
言葉を 続けた。

『貴方を 嫌いになったとか 夫に バレそうだからとか。。。
そんな事では ないの。
でも もう 無理だという事が 分かってしまったの。
ただ それだけの事。』

苛立った彼は 店の中の人に 聴こえるんじゃないかという様な声で
『君の言ってる意味が 僕には 伝わらないよ!!
兎に角 店を換えて 話そう。』

『いいえ。。。。もう 私は 帰るわ。ごめんなさい。』


そう言い終えると、煙草をもみ消し 私は 店を 後にした。

私を追って飛び出してきた彼の 私の名を呼ぶ声に
一度も振り返ることなく タクシーを拾い。。。自宅の場所を告げて
深く座席に 身体を沈めた。


    早く リュウの待つ 家に帰らなければ。。。。。

       私の頭の中にあるのは それだけだった。

今 別れた彼の事も 今夜も遅いであろう 主人の事も 
私の ココロには 存在していなかった。

        
       街の明かりが。。。。。雨に濡れて キラキラ 踊っていた。
by deracine_anjo | 2004-07-20 01:57 | 『耳朶』  短編小説