『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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『凍えた月を見つめて』 小説 (21)


 静かに 『503号室』のドアをノックし 拓哉はドアを開けた。

 『拓哉?』・・・疲れている様子だったが 優しく輝く様な微笑で 見つめる明子。

 けれど・・・頬には 涙の跡が・・・。

 『明子、ありがとう。今 僕らの赤ちゃんに逢ってきたよ。

 綺麗な女の子だ。明子に似て美人で 健康そのもの!!煩い父親に 僕は

 成りそうだよ。』

 『煩い父親?』 不思議そうに 拓哉を見つめる明子。

 『あぁ。変な虫が 寄って来ない様にと ハラハラしそうだからね。』

 『拓哉ったら。今からそんな事 考えてるの?』

 『明子をNYに行かせた時も そうだったよ!!君は 素敵な女性だからね。』

 自然と唇を重ね合わせながら 明子の瞳から新しい涙が止め処もなく

 溢れていた。

 『拓哉 ごめんなさい。私 間違っていた。拓哉にも赤ちゃんにも 自分勝手な

 生き方を選んで 迷惑・・・』

 嗚咽で それ以上言葉に成らない明子の唇を 優しく人差し指で抑え

 『婚姻届と出産届けを 直ぐに出さなきゃ成らないね。

 名前は・・・・輝(かがやき)と書いて あかり・・・なんて どうかな?』



 明子の両親に昭子を託し 拓哉は明子の着替え等を取りに一度 自宅に戻り

 安堵感が心を満たし 始めて 泣いた。

 心は神に感謝する想いと幸福感で満たされていた。

 『ありがとう、昭子。僕は最高に幸せ者だよ。』自然と零れ落ちる言葉。 



 そして 拓哉の心に ある1つの決意が想いとして 浮かんでいた。

 今夜の月の様に。。。。

『凍えた月を見つめて』 小説 (21)_a0021871_9593470.jpg


             『凍えた月を見つめて』 小説 (21)
by deracine_anjo | 2005-12-20 10:01 | 『凍えた月を見つめて』 小説