『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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『影絵』 短編小説 『蜃気楼』 』

『影絵』 短編小説 『蜃気楼』 』_a0021871_145901.jpg


私は 何を 求めているんだろう。。。。
私は 何を 探しているんだろう。。。。
私は 何処に 向かっているんだろう。。。。



同じ言葉を 何度も何度も 『私自身』に 投げかけながら
街の雑踏の中を 歩いていた。
時折 すれ違うサラリーマンの不躾な視線の中
何かに 追われる様に 私は 『今年一番の暑さ』 だと 
今朝観たテレビでアナウンサーが言っていたのを 
思い出しながら 歩み続けた。。。。


けれど 一瞬 時間が 停まった様な気がした。。。。
『あっ。。。倒れる。。。。』 そう 思った瞬間
力強い力で 受け止められ 辛うじて 路上に倒れこむ事は 
免れたのは 分かった。。。
遠のく意識の中 陽射しを背にした若者らしき彼の顔は
もう。。。私には 見えていなかった。
『大丈夫ですか?』 微かに聞こえる声が 遠のいていく。。。。


目覚めた私は 白い壁と消毒薬の匂いで
ここが 病院である事は 直ぐに理解する事は 出来た。
『気が付きましたか?今 医者を呼んできます。』
日に焼けた端正な顔立ちの青年が 自然な素振りで私の顔を覗き込み
軽やかに ドアから姿を消した。
(思い出さなければ。。。。
そう。。。今日は 『結婚記念日』だからと 夫がレストランを予約して
その前に 私は 美容院に向かう途中だったのだ。)
時計を見て (まだ 間に合う。。。)。。。そう 思った瞬間
ドクターが 看護婦さんと共に 入ってこられた。


『妊娠してらっしゃいます。丁度 3ヶ月目に入った所です。
今が 一番大事な時期ですよ。 あの方が 助けていなかったら
大事に到ったかもしれません。 注意してくださいね。
ところで 今日は大事をとって 泊まっていかれますか?
ご家族に 連絡しましょうか?』
温和に話される初老のドクターに
『ありがとうございました。でも もう 大丈夫ですので。。。。
ところで 私を 助けてくださった方は?』
『ああ もう 帰られました。一応 お名前とご連絡先は
お伺いしてますよ。』。。。そう言いながら 看護婦さんが 
一枚のメモを渡してくれた。



『岡部 優一   品川区。。。。。』
少し角ばった 誠実そうな字で書かれたメモを見ながら。。。。



『何かが 始まる』。。。。。。


      『蜃気楼』。。。。を観た様な 気がした。



              『影絵』 短編小説 『蜃気楼』 』
by deracine_anjo | 2004-08-18 15:31 | 『影絵』  短編小説