『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

『約束 短編小説  『突然の電話』 』

 
 今日も 暑い一日が 始まる。。。そんな予感のする 朝。
 夫と子供を 送り出し
 平凡だが 穏やかな生活の 繰り返しで 始まる筈だった。
 その『突然の電話』 が 掛かって来るまでは。。。。

 
 受話器を取り上げるのに 何故か 一瞬躊躇したのは
 今にして思えば 何かを 『予感』させる ベルの音だった気がする。
 (そんな筈は 無いのに。。。。)
 受話器の向こうから聞こえてきたのは
 心持ち無理に元気な声で喋っている様な 『慶子』 の声だった。
 (嫌な予感がした。。。。)


 慶子とは 子供の頃から 姉妹の様にして お互い (肩を寄せるようにして)
 育ってきた。
 私達には 両親も無く 有ったのは
 『ベビー服とタオルケット 一枚。。。その中に 『生年月日と名前』 だけ
 書かれた 走り書きの一枚の メモ。
 そう。。。。どんな理由が あったのか 分からないが
 私達は 捨てられた 子供だった。


 同じ日に捨てられ 同じ施設に預けられた因縁か。。。
 私達は 子供の頃から 『鏡の様』に
 施設の中で暮らしてきた。
 慶子は (明るく利発な子供)で 私は(大人しく静かな子供)だったが
 子供ゴコロにも  『慶子とは 一生付き合っていく事になる。』
 そう感じていた。
 後で 慶子に聞いた所 慶子も 同じ様に 感じていたそうだ。


 『朝っぱらから ごめんなさいね。
 ちょっと 電話では 話せない事が出来たの。
 近い内に 時間とって 何処かで 会えないかしら?』
 (何か 重大な事が 慶子の身に 起こったんだ。)
 それは 決して いい話では ない!。。。。鏡の様に育ってきた私にだけ解る。。。
 確信にも似た感情が 私の鼓動を 早くしていた。
 『ええ いいわよ。子供が 帰ってくるまでに 家に戻れば
 私は いつでも 構わなくってよ。
 慶子の仕事の スケジュールに 合わせるわ。』
 『ありがとう。。。。それじゃあ。。。。(スケジュール帳を見てる音が微かに
 受話器から 聴こえてくる) 明後日。。。Tホテルでランチでもしながら。。。
 ッて言うのでは どうかしら?』


 キャリアを積んで 女性管理職の地位を手に入れた 慶子らしい
 指定場所。。。
 『分かったわ。じゃあ 明後日 ホテルのロビーで12時に。。。。』


 今にも泣き出すのでは無いかと思う位 安堵した声で
 『ありがとう。。。美子。じゃあ。。。明後日。。。。ごめんね。』
 そう言い終ると 電話は 切れた。
 受話器を置き ふと カーテン越しに見える明るい日差しに
 軽い目眩を 感じて 思わず 側のテーブルで
 身体を 支えた。。。。。



       慶子の身に。。。。何が。。。。



        『約束 短編小説  『突然の電話』 』
 
 
『約束 短編小説  『突然の電話』 』_a0021871_1433799.jpg

by deracine_anjo | 2004-08-04 13:56 | 『約束』  短編小説