『名も無き 雑草。・・そして 此処に おります♪』 


by deracine_anjo
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『凍えた月を見つめて』 小説 (19)


 前回の事がある。
 
 また 彼女が遣ってきたのだろうと そのまま インターフォンにも出ないで 

 ビールを飲んでいると ガチャガチャと玄関で微かに音がする。

 『いい加減にしてくれ!』 そう呟きながら インターフォンを握りしめようとした途端

 玄関の開いた音と共に 聴きなれた明子の声で

 『まったく 拓哉は 未来の妻を迎えにも出ないで 一体 何をしているの!!』

 慌てて 廊下のドアを開けると 其処には 紛れも無く 愛する明子の姿が。。。

 一瞬 拓哉は右手を隠そうとしたが 傍目には もう殆んど解らぬ程に リハビリは

 進んでいた。

 『明子。。。。』 それ以上言葉に成らない拓哉の胸の中に 明子は飛び込み

 熱いkissを 心を 確かめ合う二人だった。



 『ほら!!拓哉の子供。。。順調に育ってるよ。』

 何と輝くような笑顔で微笑む明子なんだ。これが 母親に成ったと言う事

 なのだろうか?

 『触ってみて・・・感じて・・・』

 明子は素知らぬ顔で 拓哉の右手を掴み 自分の腹部へと導く。

 『何 照れてるの・・・拓哉でしょ!!父親は!!待ってるのよ・・・拓哉の

 ぬくもりを感じたくて・・・今迄 寂しい想いをしてきたから。』

 一瞬 震えるのでは・・・と 脳裏を掠めたが これが奇跡なのだろうか。

 この子の波動に 拓哉の右手は 今までとは違う何かを感じて 自然に明子の

 いや・・・自分の子供に導かれていった。

 静かに微笑む明子。

 『ありがとう。。。』 自然と涙と共に零れる言の葉。



 考えた末 キチンと日本で拓哉の妻として子供を生む為に 1週間の短い

 期間ではあるが 両家の両親への報告と婚姻届 それに何よりも 

 産婦人科との繋がりを持つ為に カリキュラムを中断して 帰ってきたと 

 久し振りの明子のぬくもりを 確かめた拓哉は 明子の言葉を静かに聴いていた。

 『後少しで 終了するの。だから これだけは 我が儘を許して欲しい。

 勿論 体の事を一番に考えているわ。今回のフライトもドクターに相談して 太鼓判

 押して貰って 帰ってきたのだから・・・。』

 

 『もういいよ。このまま 明子と子供のぬくもりを感じていれば 僕は 何も

 反対はしないよ。』



 静かに そして 熱く 明子を求める拓哉の心の中に 新たなる闘志が

 湧いているのを 明子は抱かれながら 幸せに感じていた。


『凍えた月を見つめて』 小説 (19)_a0021871_12452436.jpg


              『凍えた月を見つめて』 小説 (19)
by deracine_anjo | 2005-11-18 12:54 | 『凍えた月を見つめて』 小説